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デスティネーションマーケティングの現場から/Vol.10

インバウンド6000万人時代、地方はその恩恵を享受できるのか

文:村木 智裕(合同会社Tourism Exchange Japan 代表)

先日、JR東日本が主催する地域共創アワードにおいて基調講演を行った。講演の趣旨は、インバウンド6000万人時代に、地方がその恩恵を享受するために必要なことを考えるというものであった。このテーマを選んだ理由は、私の中に一つの大きな課題感があるからだ。

6000万人の旅行者が日本に来たとして、果たして彼らは東京・京都ではなく、地方にも赴くことがあるのか。この点については、かなり懐疑的な見方をせざるを得ない。つまり地方への恩恵は限定的で、都市部、いわゆるゴールデンルートの過密状態が一層悪化するという見通しだ。その結果として、インバウンド不要論にまで発展する可能性を懸念している。もちろん、こうしたシナリオは避けたいという思いからである。

訪日外国人は年間4000万人にまで増えた。1000万人を超えてから10年余りの間の出来事である。その間に国や地方自治体が共に取り組んだ結果としての現状の姿であるが、東京・京都等のゴールデンルートに過密する実態もまた、この間の取組によって作られたものと言える。

国は地方誘客を大きな方針として掲げている。ここ数年、同様の方針を示し、それに沿った施策を打ち出してきた。その点については100パーセント賛同の立場であるが、問題はその中身である。少なくとも、これまで有効な策を打てたとは言い難い。現状が全てを物語る。そのような中から、これまでの結果を大きく上回るような施策を打ち出すことができるかどうか。

瀬戸内のマーケティングに取り組んだのは2016年からだ。2020年までの間に世界的なデスティネーションにまで高めることができた。同様の手法でいくつかの地域で取り組んだ結果、着実な成果が出てきた。一つは北陸の石川県である。石川県と金沢市の理解を得て2020年から取り組んだのだが、その結果は地方誘客の可能性を大きく感じさせるものとなった。

この動きは瀬戸内で起きた変化と同様のもので、2024年(および2025年予測)の飛躍は、新幹線延伸の影響もあるが、2023年の時点ですでに全国との開きが生じていることに加え、富山県や福井県の増加数が石川県に比べて軽微であったことを考えると、この数年間の取組の成果が相当程度含まれると評価できる。

また現在、三重県、奈良県、和歌山県が共同で取り組む「紀伊半島」をデスティネーションとしてプロモーションする活動においても、瀬戸内や石川県の結果を超え、そのことを想像させる成果が出ている。2025年、2026年と続いて米国トップメディア「TIME」に「今年行くべきデスティネーション」として紹介され、海外の様々な旅行会社でテーラーメイドのツアーが提供され始めている。

これらの事例には、地方誘客に向けた明確な道筋が示されていると言って良いだろう。この結果を、多くの地域で生かしていきたい。

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