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デスティネーションマーケティングの現場から/Vol.4

マーケティングミックス4Pの前に問うべきは「地域の旅の価値」

文:村木 智裕(合同会社Tourism Exchange Japan 代表)

デスティネーションマーケティングに限らず、マーケティングの基本として語られるマーケティングミックス4P。マーケティングを行う上での必要な活動や課題を整理するために、使い勝手の良いフレームワークだ。良い商品・サービスかどうか、適正な価格か、流通環境は整っているか、情報は伝えられているか。マーケティングの活動はこの4つの活動に集約されると言っても良い。ただし重要なことは、ここに至るまでにはいくつかのステップを踏む必要があること。この過程を省略してしまうと、どんなに時間やお金をかけても、期待するほどの成果は得られないことになる。とりわけ重要なことは、地域の旅の価値を明らかにすること。

新潟のDMOに関わり始めて5年が経った。組織見直しをサポートするというミッションでスタートしたが、3年目から取り掛かったのは、新潟の地域の価値、旅の価値を理解し、その価値を世の中に届けるためのメッセージを明確にすること。約2年を要したが、ようやくまとめることができ今年度になって発表した。「大地と雪の恩恵」、「Crafted by Nature, Perfected by Time」。日本列島形成を背景に生まれた世界的にも稀な豪雪地帯である新潟。その大地と雪の恩恵の中で生まれてきた美しい自然と、そこでの人々の暮らしや文化・歴史。新潟の旅はオーセンティックな日本の姿を知るだけでなく、自然や生物多様性の価値を実感することができる。こうしたコンセプトを明らかにした背景には、世の中のサステナビリティへの意識の高まりがある。今後少なくとも10年は続くメガトレンドと言え、ツーリズムの世界においても、背景にはこうした人々の価値観の変化があることを踏まえた活動が必要となってくる。

世界の富裕層マーケットの中心にあるVirtuoso。スイスに本部を置き、厳格な基準のもとで選ばれた旅行会社や旅行エージェントのみが加盟する団体。Virtuosoが会員向けに提供するフラッグシップマガジンの中で伊勢志摩の「海女」文化が大きく取り上げられた。リアス式の海岸が広がる志摩の地域で、その海の恩恵のもとで古来より暮らす海女の姿は、訪れる価値があるものだとしている。

今、日本国内の観光振興は「高付加価値旅行者」に軸足を置きつつあるが、日本の地方への誘客を図る上で有効な戦略となるだろう。

そこで重要なことは、その地域に高付加価値旅行者が訪れる価値を見出すこと。言い換えれば、やみくもに高付加価値旅行者の獲得に向けた活動に取り掛かるようなことをしないこと。ともすれば、国の方針に合わせるため、もしくは他の地域に遅れをとることがないようにしようと、地域の旅の価値や状況も見極めることがないままに取り掛かることになってしまう。

プロモーションや旅行会社へのセールス、旅行商談会も、すべては地域の旅の価値と、そこに共感する旅行者が明確になっていることで、はじめて成果を生み出すことができるもの。まずは、地域のことをよく知ることから始めたい。